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『家のない少年たち』(鈴木大介)から、貧困者のサバイバルの現実を知る

『家のない少年たち』読了。

  

家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル

家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル

 

  

 まえから気になっていた書籍のひとつ。読了して宿題をひとつ終えた気持ち。

 いま連載中の人気漫画『ギャングース』の原作を書いている鈴木大介氏のノンフィクション。2011年だから5年前の刊行。

 

ギャングース(13) (モーニングコミックス)

ギャングース(13) (モーニングコミックス)

 

 

 貧困のなかで生まれ育った少年たちが、地域社会、学校、会社、親族から排除されてストリートに出ていくしかなくなり、犯罪で生きていく様子を丹念に作品化している。

 部分的に、伝統的なノンフィクションの技巧をやめて、小説的なストーリー構成をしている。それで読みやすくなっている。

 累犯少年たちは、貧困家庭、育児放棄家庭で誕生し、学歴がないまま、生きていく。

犯罪者となった少年(元少年ふくむ)の犯罪の手口、その仲間の人となり、ふだんの生活を知ることができる。

 私は普段、裏モノ情報は読んでいないので、ここで描写された違法行為の手法は、ほとんど知らないことばかりだった。

 鈴木氏のユニークなところは、取材をしていくなかで、取材協力者に感情移入していくところだ。

 彼らがまっとうに生きるための助言をしたり、刑務所などの施設に面会にも出向いていく。

「手口」というノウハウを取材で拾い出したあとに、その当事者たちの人生が気になってしまい、取材が深まっていく。

 終章に近づいていくと、主人降格の少年が、仲間二人が逮捕されて孤立してしまう。そのとき彼の生活の面倒を見るのがチャイニーズマフィア(チャイマ)である。仲間二人は、大金を少年に残していた。そのカネを元手に、チャイマに住居と食事を提供されて、不動産の資格をとるための猛勉強をする。資格を取得。法人も設立し、仲間二人の出所を待つ、という展開に、ほろりときた。中卒で満足な教育を受けなかった人間が資格を取る。たいへんな努力がいる。

 長い長い後書きでは、人生の大半を刑務所で過ごした男が、出所して、堅気として生まれ変わる、ということが書かれている。刑務所で、勉強をするほどに、悪事は持続化膿性がない、と悟っていく。出自は、鈴木氏が予想していたとおり、めちゃくちゃの家庭環境。そのなかで、満身創痍で生きていく手段が犯罪だった。刑期を終えて、男は生まれ変わろうとしている。

 地味な表紙で、かざりけのない本である。

 想像するにあまり売れなかったのだろう。

 もりこんだ事実は、一級のノンフィクション作品のそれであり、じつに面白い。

 伝えるべき事がある。しかし、それが広く社会に伝わらない。そのことに、歯がゆさを感じた、鈴木氏は、この内容を漫画作品として仕上げることを決意して、傑作漫画『ギャングース』がうまれた。

『家のない少年たち』と『ギャングース』には、共通した固有名詞をもった、登場人物が出てくる。

 ふたつの作品を比較すると 二度楽しめる。

  現代日本の貧困問題に取り組んだ名作ノンフィクションである。