深町秋生先生の、『猫に知られるなかれ』は、国産スパ小説として楽しめた。
戦後の混乱期に、復員兵たちが、どうやって生きのびたのか。
その息づかいを、フィクションの形で表現できている。
これまで深町先生の警察小説はかなり読んできたけれども、
警察官という役所が舞台だと、そんな警察官いないよな、と思いながら読むときもあった。
しかし「戦後の混乱期」という舞台だと、話しは別。
なんでもあり、という混乱期から安定期に移っていく、
という間隙に、ドラマが立ち上がる、というのは納得できる。
食糧不足で栄養失調が普通の時代状況のなかで、
筋骨隆々であるということは、
豊富な資金を握った人間たちとコネクションがある、という描写は、面白かった。