もう書評は出ないだろう、と思っていたら中日新聞が「文筆生活の現実」を紹介してくれたという情報が入る。小さなコラム程度の記事であるが、とても嬉しい。中日新聞は私の生まれ育った愛知県で最も大きなシェアをもっている新聞であるし、私の父が毎日欠かさず読む新聞だからである。我が家には読書人はいないが、テレビや新聞をよく観て、家族で話題にしてきた。その重要な媒体が中日新聞だった。
名古屋に住んでいたとき、中日新聞記者からこういう話を聞いたことがある。
「地元ネタについては3大新聞(朝日、毎日、読売)には絶対に負けない。僕らが取材するときは、他紙が後追い取材する気がなくなるくらい徹底的に取材するからさ」
いまもそういう記者が中日にいるのかどうかはわからない。その記者はいま東京新聞で辣腕記者として、他紙の記者もその名を知るビッグな存在になっている。
北オセチア学校テロ事件で、チェチェン報道をしているジャーナリストの林克明さんが、民放テレビ局でこの事件の背景について解説している姿を見て、「文筆生活の現場」を一緒につくって良かった、と思う。大マスコミのモスクワ支局長のコメントは、ロシアの情報筋のプロパガンダになっている。現地でゲリラの取材をしてきた林さんの仕事は、もっと評価されるべきである。地獄の戦場を観てきた人間のためにもっとチャンスを。