石井政之の作業場

石井政之  作家、編集者、ユニークフェイス研究、「ユニークフェイス生活史」プロジェクト、ユニークフェイス・オンライン相談、横浜で月1飲み会。---有料マガジンの登録をお願いいたします

腎臓放浪記










平凡社新書」の1冊。臓器移植者からみた「いのち」のかたち・・・という副題がついている。腎臓移植を受けた当事者の記録として極めて重要な文献である。



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気のついたことがある。『五体不満足』の著者乙武洋匡氏のように〈形〉に欠落のある人が「身体障害者」と呼ばれるのに、私は「病人」と言われるのである。「病人」ではなくて「身体障害者」だといくら説明しても、「健康には気をつけて」と挨拶される。悪い気はしないが少しちがうなと思う。内部疾患の障害のせいで何度も死にかけ、不思議と生き還ってきた。でも自分では「病人」だと思っていない。「身体障害者」だとみなしているが、その逆が「健康」だとは考えたこともない。反対は「健康」である。
 外的障害者は自分を「病人」だとは思っていまい。乙武洋匡氏などとても「病人」には見えない。彼は〈形〉に欠損はあるが、〈いのち〉の安全な障害者、私は〈形〉に欠落はないが〈いのち〉が危険にさらされている障害者なのである。だから私は「医療」の世話になっていて、乙武氏とちがい、福祉とはいまのところ直接のつながりはない。



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病人にも、外見から病状がうかがい知れる人と、外見からはわからない人、がいる。
障害者にも、健康な障害者と、病んだ障害者、がいる。というデリケートなことがらを、ゆっくり説明している。
当事者による臓器移植論を立てることが可能かもしれない、と励まされる本だ。「生命倫理学者」たちの発する言葉についてもきっちり批判をしているのがいい。