小泉義之氏の新刊『病いの哲学』(ちくま書房)を読みはじめる。ソクラテスの死生観がはじめに問われている。
ソクラテスのもっていた死にたいするイメージ(幻想)が極めて虚構性を帯びていたことが検証されている。
「哲学者の魂は肉体を最高度に侮蔑し、肉体から逃亡し、まったく自分自身だけに成ろうと努力する」
というソクラテスの言葉を何度も味読。「哲学者」のかわりに、思い思いすきな言葉を当てはめるとよい。
美容整形を願望する者たちにもこれは当てはまる文章のように思える。ソクラテスは、
情報とか思想とかかぶれて自己の肉体を改造することに躊躇しない現代人とにた者であるということなのだろうか。ソクラテスは、
自分の死をまえにして、ながながと哲学を披露するわけだが、曲がりくねったことを言っている。迂回する思考経路をたどるのがもどかしいが、
死をさっさと割り切る人が増えている時代なので、ここは迂回するしかないのだろう。
小泉氏の著作『生殖の哲学』は,拙著『自分の顔が許せない!』で引用した。この『病いの哲学』もについても影響を受けそうだ。