「生きるための経済学」読了。
この本もまた、上田紀行とよくにた構造をもった著作だった。生きることについて真摯に考えようとすると、現実の学問体系への異議が立ち現れる。その異議に正面から立ちむかうことによって、新しい学問や生き方を再構築しようとしている。見事であった。アダム・スミスが、人間不信を基盤とした、経済学を創出した人間であると指摘した部分は圧巻。同様な構造はマルクス経済学にもあることはよく知られているが、スミスもまたそうだったとは知らなかった。著者が、「選択の自由」の暴力性を分析する手並みはすばらしい。新しい経済学を再構築するために、論語の重要性に言及していた。これもまた傾聴に値する。共同体という幻想が破綻した時代の思想家,孔子は現代においてもっと読み直されるべきなのだろう。