「ふたり 皇后美智子と石牟礼道子」を読了。
「苦海浄土」を読んで、すぐに手に取りました。予備知識ゼロで読み始めたので、内容にすこし面食った。天皇皇后の二人が、水俣病事件にこれほど興味をもっており,被害者・患者との面談を切望していたこと。これを言論の自由がない天皇という立場で、模索して、形にしてきたこと。被害者・患者側もまた、チッソを許す、という境地に至っており、天皇への直訴を考えていた人達がいて、その悲願が実現していくプロセス。これをノンフィクション作品としてまとめあげた、髙山文彦氏の力量はすばらしい。髙山氏の作品はいくつか読んできたけれども、この作品はかなり異質である。そのひとつは対象との距離感にあるのではないか。石牟礼道子氏の病室に定期的に見舞い、親戚のようなつきあいをするようになっている、という距離。天皇皇后という存在については、まったく会えることがないという、遙かな距離。こういう距離の落差を、文章で埋めながら、異質な皇后と石牟礼道子という、異質な存在の共通点をしっかりと描いていく。実に興味深い作品だった。
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