石井政之の作業場

作家、編集者、ユニークフェイス研究、「ユニークフェイス生活史」プロジェクト、ユニークフェイス・オンライン相談、横浜で月1飲み会

石牟礼道子全集メモ

。声なき声をきいて文章表現にするということでいうと、勉強になる。まったく発語できない胎児性水俣病の若者たちの声を聞き取って書き込んでいる。こういう若者たちと、さまざまな方法でコミュニケーションをする地域の老女たちが登場する。こういう人間の魂とのふれあいは、エビデンス重視の現代にはまったくそぐわない。石牟礼はぐいぐい書いていく。有機水銀中毒について学んでいくことで、有機化学の基礎知識も盛り込んでおり、重厚な文章になっていく。魂の声と、有機水銀中毒の学塾的な記述が、交差していく。希有な文章表現。こういう文学があるのか。石牟礼道子ノーベル文学賞を、と言いたくなる。受賞は拒否するだろうけれど。

 

石牟礼道子全集・不知火 (第1巻)

石牟礼道子全集・不知火 (第1巻)