『カニは横に歩く』(角岡伸彦)をやっと読了。
著者は青い芝の会の介護ボランティアだった。その経験から、記述されている事実は細かく、人間観察もしっかりしている。至近距離で観察し、体を動かしてきた人間だから書けたノンフィクション作品。
健常者を敵とみなす社会運動は、大きく発展することなく終息した流れをたどることができた。そして、時代はかわり、新しい動きが芽生えていく。時代に並走した角岡さんという書き手を得たのは、さすが、青い芝の会だな、と感じた。突破な障害者たちは、多くの人を集めていく力があったのだろう。
ひとつの会議に10時間かけている。これでは、ほかの障害者も、善意ある介護者は逃げ出す。
それにしも、まともな教育を受けていない人たちが、激しく行動したという事実は重いし貴重。いまの時代からみると、それは明らかに無茶だし、無駄だし、だめなこともあったろうが、それでも、ほかに生きる選択肢がなかったのだから、それでいいのだろう。そういう無謀なことはほかのマイノリティーの歴史にもあった。ほとんど記録されていないのだろう。記録者がおおい、という運動はそれだけで貴重だ。
青い芝には詩人がいて、その言葉の力があった。そして全共闘運動の時代にあった反権力闘争という熱気もあった。
障害者の自立運動は、別の形で、継承されて発展している。
日本の障害者運動のビッグバンの発火点は、青い芝の会、という伝説がある。
わたしもその伝説を信じていたが、本書でその舞台裏を知ることができる。
神戸の大震災から、青い芝の会も大きく変わっていく。仲間の死。その子どもの人生まで、書き込んでいく。
当時、障害者が自立すること、結婚すること、子どもを産むこと、育児をすること、すべて冒険だった。無謀なことだった。そのすべてを実現するために、多くのボランティアが巻き込まれていった。
生きるってすごいことなんやな。