『方舟』(夕木晴央)。
この小説を手に取ったのは、自分の老いを感じたから。
老いてきたので、自分がよむ小説の傾向が固まってきた、それではいけない、たまにはベストセラーなど大人気の作品を読まないとダメだ、と思ったから。
小さな書店で、平台に山積みされていた。買った。
買ってはみたものの、半年くらいほったらかしにしていた。
ネット環境がない環境で数時間過ごすことになったので、これを機会に、積ん読の山から取り出して読んだ。
登場人物は全員平凡な男女。特徴がない。話している内容も、奇抜なセリフはない。
10ページくらい読んだ。これは面白くないだろう、と感じた。読むのをやめた。
数カ月後、また、ネット環境がない環境になったので、再度、読み始めた。
読みながら気がついた。
密室モノの小説を読んだことがなかったので、読み方がわからなかったのだ、と。
登場人物の名前をメモして、誰が殺されたのか、をメモしながら読んだ。
それくらい登場人物のキャラが薄い、存在感がないのだ。
読みながら、それが作者の意図だ、と分かるようになっていく。
それからは読むのが面白くなっていった。
最後のどんでん返しは、見事だった。
小説そのものの面白さよりも、「どんでん返しで、読者を驚かせる、そのために小説が成立する」そのことのほうが面白かった。
こういうゲーム感覚で、長い文章を書く作家がいて、それを楽しんで読む、という読者がたくさんいる。
『方舟』を読んだことで、それが私にとって発見だった。
