石井政之の作業場

石井政之  作家、編集者、ユニークフェイス研究、「ユニークフェイス生活史」プロジェクト、ユニークフェイス・オンライン相談、横浜で月1飲み会。---有料マガジンの登録をお願いいたします

「本当の理解」という理想的な理解ではなく、「事実だけを知る」ことが、かなり重要

「当事者のことを本当に理解することはできない。なぜなら私は当事者ではないから」
という理屈を言う人がいるけど、それは非現実的だと思う。

私は男性だけど、女性差別の現実や事実について、ノンフィクション作品や新聞記事を読んで知っている。女性の当事者ではないけど、女性差別の「事実だけは知っている」。
共感するとか、ともに生きるとか、そういうことではなくて、事実を知っている。
100点満点の理解はあり得ない。

自分のことだって100パーセント理解できないまま、人は一生を終えて死んでいく。
これは、古今東西、変わらない真理のひとつだろう。

そういうわけで、当事者に何が起きているのか、という事実を確認して、知ることは、
万人にとって重要なことだと思う。

本当の理解、という前に、ひとつの事実を知る、確認することがたいせつだ。


新築一戸建て全焼の被害者の気持ちは分からない。
当事者ではないから、ほんとうの気持ちは分からない。
しかし、火事を起こしたらすべてを失う、だから火の用心。
それくらいのことは、小学生でも理解できる。
私たちが、日常で普通にやっている、理解のプロセスだろう。
火事の被害者の気持ちが分からないと、防火活動はできないだろうか?
そんな理屈で、私たちは防火について考えていない。

ユニークフェイス当事者の本当の気持ちは分からない。当事者ではないから。
この理屈には、飛躍がある。
一つずつ理解することはできるだろう。

私は、日本人だけど、技能実習生の苦悩や苦境は、ジャーナリズムを通して知っている。技能実習生ではないけど、かなり理解が進んでいる。

私は、54歳で健康だけど、周りの同世代が、加齢で病気になっているのを見ているので、なるほど病気は恐いな、くらいの理解はできる。

あなたは何の当事者なのか。何の非当事者なのか。
その当事者・非当事者の区分けには、どんな根拠があるのか。
その根拠はあいまいで、テキトーに線引きしているだけかもしれないのだ。