地べたの貧困というのは日本国内にもあってノンフィクションの良書も多い。混沌の中で生き抜く貧困当事者の活力と,それを見殺しにする政策の描写が秀逸だった。貧困と政治、というのはきっても切り離せないけれども,日本では切り離して議論して貧困者を批判していく。
資本主義の先駆者である英国では格差と階層はあるけれども,貧困者を救済する戦うアナキストがいた。それもまた絶滅危惧種ではあるが戦う伝統はあるというのが面白かった。専門書の引用なし、宗教的な匂いなし,の文章だったのは、書き手の誠実さと、地べたからの報告書としての矜恃だろう。
ユニークフェイス当事者作家として、はっとした描写があった。
「肌の色が違う、太っている、などの理由で子どもが集団暴行の標的にされている英国の学校現場で、障害児だけがいじめを免れているというのは、そらやっぱり素人目にも無理がある。
違う者が標的にされるというのは、時代・地理を超えて普遍の人間の現実だからだ」
(人権と平等のもやもや---インクルージョン 2009-12-7)
英国のインクルージョン教育の限界である。社会的弱者を包摂するという理想には限界がある。それをよく見ている。そうなのだ、人間が社会という集合体をつくったときから、ある宿業。それは、見かけの違う人間<とりわけ障害児>を排除するという営み。
貧しき者は戦うべし、という政治思想と、貧しき者は死すべし、という政治思想。
その戦いは永遠に続くのだろう。
いまの日本では後者の政治思想が優勢である。
貧困者が多数派になった現代日本。
本書は、未来の日本で起きるであろう、(いま、すでに起きている現場もある)階級闘争の預言書として読める。
「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブレ店の無料託児所から」
ブレイディみかこ著 みすず書房 2017
子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から
- 作者: ブレイディみかこ
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- メディア: 単行本
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