「ライフストーリー研究に何ができるか」読了。ライフストーリー研究の専門家,桜井厚氏の定年退官記念として編まれている。読み進めて思ったのは、ここのマイノリティ研究のインタビューの蓄積が薄いのに、方法論について細かい議論をしている点である。良質なインタビューを獲得するためには、インタビュー技術の向上、インタビューされる側の人間の語彙・表現能力・社会的発言への意識の違いなど、さまざまな要素がある。その土台の部分が、成熟していないのが日本社会である、という認識に立って本書を読むかどうか。真摯であることはわかるが、良質なインタビューを獲得する、という観点でみると、本書の寄稿者たちはまだ発展途上。今後に期待したい。が、些末な議論にならないことを願う。