精神障害者の自助組織であり、北海道の過疎地域で、事業化に成功した「べてるの家」の関連書籍。
キリスト教に興味が出てきているので、教会と、精神障害の関係を綴ったエッセイ集だろうと思って購入して読み始めました。
エッセイの形を借りてますが、ガチの臨床事例集です。
キリスト教の教会である、浦河教会を舞台に、精神障害の当事者たちが、あらゆるトラブルを引き起こす。それを受け止める牧師、教会員、地域の人たち。
とくに統合失調症の人たちにまつわるトラブルが多い。それに、キリスト教信仰を持った人たちが対応していく。
ときに失敗する。ときに成功する。
学級崩壊のように、教会崩壊のような状況のなかに、希望を見いだして、当事者のセルフヘルプを実践していく。
読みながら、苦しくなっていく。
緊張感が伝わってくるから。
「当事者研究」という手法がどういうものなのか。すこし理解することができました。
幻聴、幻覚などに悩まされている精神障害当事者たちが
その体験を、ほかの当事者にロジカルに説明することで、
解決策、軽減策をともに考えていく。
そして、実践して、効果があれば、その方法をとりいれる。
効果がなければ、採用しない。
精神障害の病状を軽くするためのPDCAサイクルを回していく。
そう理解しました。
これ、数行で文書でまとめるのは簡単ですが、
実践するとなると、とんでもない忍耐と寛容さが求められます。
それを継続して実行してきた向谷地氏は、ただ者ではありません。
そして、この本を読んで浮かび上がってくるのは、北海道浦河町という地域の
過疎と、辺境という環境です。
どんな過疎地域でも、辺境でも、人間は住んでいて
心を病む人がいる。
大自然のなかに生きていると、
人間関係のストレスはたいしたことない、と思いたいのは
都市にいきる人間の勘違いにすぎない。
「べてる家」の書籍には、はずれ、はありません。
オススメです。