石井政之の作業場

作家、編集者、ユニークフェイス研究、「ユニークフェイス生活史」プロジェクト、ユニークフェイス・オンライン相談、横浜で月1飲み会

書評『大丈夫、人は必ず生まれ変われる』(岩井喜代仁)--- 元ヤクザで覚醒剤中毒の当事者が、改心して、同じ境遇の当事者を救うためにもがく

 元ヤクザ。売人。本人もシャブ中。家庭崩壊。長期の刑務所くらしから出所して無職。ただし子どもはいて、養育費を送ることを考えている。しかし名案なし。しんどいのでシャブを食らう。
 そういう人間が、同じようにシャブ中毒の元当事者(回復者)と出会う。そして、回復したい、仕事をくれ、と懇願する。ダルクにつながる。ダルクでは、社会的な落伍者が集まっている。その人たちを、救済する。救えない場合は、その人たちは自殺するか、刑務所に行くか、精神病院に入院(また薬物依存症になる)。真剣勝負の世界だ。
 こういう動きを強く支援しているのは、キリスト教の人たちだった。
 さくさく読める。

 きれい事の言葉がぜんぜんない。

 この著者を深夜ラジオで知った。気合いのはいった声だったので、よく覚えていた。図書館で、みつけた書籍が、あのときのラジオの声の人だ、と気づいて読んだ。
 この本には、もっとも困難な当事者(薬物中毒という病をもった当事者)をいかにして救済するか、という悪戦苦闘と、救済のための方法論、資金調達、人間を育てるとはどういうことか、が虚飾なしで書かれている。この人の下で育った若者が、ほかの街で,ダルクを解説している。のれん分けだ。この流れもすごくいい。

 有名大学を卒業した、社会起業家といわれる人たちとは、ぜんぜん違う、生身の人間の姿がある。

 

大丈夫。人は必ず生まれ変われる。

大丈夫。人は必ず生まれ変われる。