元ヤクザ。売人。本人もシャブ中。家庭崩壊。長期の刑務所くらしから出所して無職。ただし子どもはいて、養育費を送ることを考えている。しかし名案なし。しんどいのでシャブを食らう。
そういう人間が、同じようにシャブ中毒の元当事者(回復者)と出会う。そして、回復したい、仕事をくれ、と懇願する。ダルクにつながる。ダルクでは、社会的な落伍者が集まっている。その人たちを、救済する。救えない場合は、その人たちは自殺するか、刑務所に行くか、精神病院に入院(また薬物依存症になる)。真剣勝負の世界だ。
こういう動きを強く支援しているのは、キリスト教の人たちだった。
さくさく読める。
きれい事の言葉がぜんぜんない。
この著者を深夜ラジオで知った。気合いのはいった声だったので、よく覚えていた。図書館で、みつけた書籍が、あのときのラジオの声の人だ、と気づいて読んだ。
この本には、もっとも困難な当事者(薬物中毒という病をもった当事者)をいかにして救済するか、という悪戦苦闘と、救済のための方法論、資金調達、人間を育てるとはどういうことか、が虚飾なしで書かれている。この人の下で育った若者が、ほかの街で,ダルクを解説している。のれん分けだ。この流れもすごくいい。
有名大学を卒業した、社会起業家といわれる人たちとは、ぜんぜん違う、生身の人間の姿がある。