実子誘拐の被害者・当事者が執筆した、共同親権についての解説書であり、単独親権制度を擁護する知識人の欺瞞と詭弁を暴く告発の書である。
単独親権と共同親権の制度を丁寧に比較検討している。
「婚姻外共同親権」という表現で統一表記している理由の説明も良かった。事実婚を含めた共同親権の議論をするときには、「婚姻外共同親権」という表記のほうが正確だ。なるほど、と膝を打った。
著名なNPO法人代表、有識者、弁護士の文章を丁寧に読み込んで、批判的に検証している。
共同親権に反対している人たちは、単独親権制度の問題点、不都合なことには言及しない。その矛盾をわかりやすく説明しているのは素晴らしい。
あとがきで、出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)の共同親権についての発言が記述されている。出口氏は、共同親権を支持する立場の人である。著者は出口氏と、共同親権について個人的に意見交換をしていくなかで本書の刊行を決めた、という。説得力があった。
個人的には、著者による木村草太分析を興味深く読んだ。Twitterの発言で物議を醸す人物だが、専門家やジャーナリストからも批判されていた。
●追記
本書で批判、検証の対象になっているおもな書籍。
共同親権を批判している有識者が執筆しています。
木村草太氏の担当した「子どもの権利を考える」