作家の梁石日さんが亡くなった。
20代から30代、梁石日さんの小説を何冊か読んだ。
力強い文体と、差別に関する評論がおもしろかった。
縁があって、25年くらい前に雑誌の仕事でインタビューをしたことがある。中野にあるマンションで話を聴いた。身体の不調を訴えていたことと、小説は儲からない、としゃべっていたことが記憶に残った。
梁石日さんは、タクシードライバーの経験者でもある。事故とケガで、タクシードライバーをやめている。私の父がタクシードライバーである。梁石日さんの描くタクシードライバーの描写は、私の知っているタクシードライバーとはまったく違っていた。
梁石日さんの描くタクシーには、貧困、挫折などのイメージが濃厚だった。人生の敗残者があつまっている、という印象だった。
私の父親との違いが興味深かった。いまになって思う。
梁石日さんはタクシードライバーという職業の奥深さ、面白さには関心が無かったのだろう。生きるために仕方なくタクシードライバーをやっていたのだろう。
私は、いま、タクシードライバー6年目。多くのタクシードライバーが家族を養うために、自分の余暇時間を確保するために、普通の仕事としてタクシードライバーをやっている。それを毎日、普通に見ている。
梁石日さんは、タクシードライバーの小説で作家になるチャンスをつかんだあとに、在日コリアンの生き様をモチーフにした小説をどんどん書いていった。私は後年、在日コリアンが経営する会社に就職した。そのときに、在日コリアンの人生を垣間見ることができた。在日コリアンについての、梁石日さんの描写は真実に迫っていた、と思う。
いま、横浜という外国人が多い街で暮らしていると、さまざまな在日外国人と出会う。在日コリアンによる在日文学だけではなく、さまざまな在日外国人文学が、これから登場するのだろう。梁石日さんの訃報を読んでそんなことを思った。
ご冥福をお祈りいたします。合掌。