石井政之の作業場

作家、編集者、ユニークフェイス研究、「ユニークフェイス生活史」プロジェクト、ユニークフェイス・オンライン相談、横浜で月1飲み会

モーニング










 漫画雑誌の週刊モーニングを購入。「ブルースマン」(山本おさむ)の展開が非常に面白かったためです。



「音楽は商品だ」「金にならねぇもんに価値ねえ〓!!」「ブルースなんかに血道を上げている奴はただの負け犬だ!!」「音楽で何かを表現したいなんて甘っちょろいことを言うような奴は相手にするな!!」「客はそんな物もとめちゃいねえ!!」「彼女と二人の車の中で、あるいはディスコやスキー場でその場にあったBGMがほしいだけなんだ!!」と吼える音楽産業のやり手が、最後には、その市場と、寄ってたつ企業からも見放されて没落していくストーリーだったため。



 内容はスカスカでも売れればよい、売れた物が良い物である、という論理は出版界を覆っていますから(同主旨のことを幻冬舎社長が、『噂の真相』の最終号でコメントしていました。悪い意味ではなく経営者である以上、売れる本を作ることは企業としては生命線です。しかし、白けるコメントだったなぁ)、この漫画家の描いていることは、音楽産業だけでなくコンテンツビジネス全体についての批評であるとも言えるわけです。



 今日の朝日新聞朝刊か昨日の夕刊だったか、作家の某(氏名は忘れました。広告代理店出身でコピーライターをしながら小説を書いている人)が、(自作には)とくにメッセージはない、読者に伝えたいことはない、というようなことをインタビューアーに答えているのを読んで、こういう作家の書いた本は金を出さなくても良い、と認識できて、判断材料を提供する良い記事だ、と思ったばっかりだったので、モーニングに反応したのかもしれない。



 昨日の、北海道新聞の取材では出版不況についても質問を受けました。



 「返本率40%ですから、供給過剰です。本の作りすぎなんですよ。でも出版点数が減る気配がない。みんなそろって地獄に向かっているようです。私はそういう流れに乗りたくないので、『文筆生活の現場』を編集しました」と回答。



 名古屋時代に「読者はバカなんだ!」「バカでもわかる文章を書いてくれ!」と私に指示をだしたことのある編集者がいました。



 私はこう回答したと記憶しています。「バカは本を記事を読まない。したがってバカにわかる文章を書くことはできない。バカにはわからない、明解な記事を書くので安心して頂きたい」



 その編集者は、うつ病になって、この業界からリタイヤしました。懐かしい思い出。編集部の中心で、読者はバカ、と叫んでいる編集者っています。気を付けたいですね。