『髪をもたない女性たちの生活世界』吉村さやか著 生活書院
9月に刊行の予定。
当事者研究者による書籍です。
10月以降に読書会を企画します。お楽しみに。
「生きづらさ」を軽減/解消させながら、この社会をしなやかに生き抜いてきた、髪をもたない女性たち。
その生活世界と多様な対処戦略に焦点を当て、「女性に髪があるのは自然であたりまえ」「女性の髪は美しいほうが望ましい」という常識的知を問い直す。
【目次】
序章 問題の所在――髪をもたない女性たちの生きられた経験を聞き取る
1 研究の目的と背景
2 先行研究の検討
(1)構成の類似性
(2)引用/解釈される語り
(3)先行研究に残された課題と本書の目的
3 研究の方法と分析の対象
第1章 髪をもたない女性たちの「生きづらさ」
1 分析の対象
2 事例の検討
(1)「治らない」――治療にともなう問題経験
(2)「隠しながら生活するのは大変」――かつらの着用にともなう問題経験
(3)小括――問題経験の生成メカニズムと軽減/解消をめぐる困難
第2章 「ウィッグ生活」という対処戦略
1 分析の対象
2 事例の検討
(1)「つけたほうがかわいい」――Aさんのライフストーリー
(2)「下着をつけるのと同じ感覚」――Bさんのライフストーリー
(3)小括――「女らしさ」の主体的実践という意味づけ
第3章 「このゆびとまれ」という対処戦略
1 分析の対象
2 事例の検討――Cさんのライフストーリー
(1)発症当時
(2)治療とかつらの着用
(3)当事者の会の立ち上げ
3 Cさんが訴えたこと――個人的問題から社会問題へ
(1)当事者同士の交流の場作り
(2)当事者の会の組織体制作り
(3)病気の啓発活動
(4)差別と偏見に対する啓発活動
4 小括――「社会問題」という意味づけ
第4章 「さらす」という対処戦略
1 分析の対象
2 事例の検討――信子さんのライフストーリー
(1)発症当時
(2)当事者の会との出会いと変化
(3)転機としての温泉
(4)メディアへの出演と葛藤
(5)MFMSとの出会いと会長への就任
3 信子さんの「カミングアウト法」
(1)「話す」――さらっと言う/詳しく説明する
(2)「見せる」――外す/さらす
4 「さらす」という対処戦略のもつ機能
(1)「伝わらない」への対処
(2)「面倒さ」への対処
(3)「さらす」ことの相対化
5 小括――「病気」という意味づけ
第5章 「スキンヘッド生活」という対処戦略
1 分析の対象
2 事例の検討――由利子さんのライフストーリー
(1)発症当時
(2)かつらの着用と治療の開始
(3)治療をやめた契機
(4)かつらの着用をやめた契機
3 「隠す生活」から「隠さない生活」へ――由利子さんの四つの生活実践
4 「スキンヘッド生活」という対処戦略のもつ機能
5 小括――「障害」という意味づけ
終章 髪をもたない女性たちの多様な意味世界に接近するために
1 本書で得られた知見
2 本書の理論的貢献と実践的貢献
3 おわりに――今後の課題と展望
補論1 「髪の喪失」を問う
補論2 隠すでも、隠さないでもなく――パートナーとの日常生活を通して
初出一覧
あとがき
参考文献