『張込み』(傑作短編集5 松本清張 新潮文庫 1965年刊行。99刷)を読了。
60年前に発売された文庫がこんなに面白いとは驚きだった。
『張込み』はこの短編集のなかでいちばん短い。読みやすい。刑事が殺人犯人を逮捕するために、わずかな手がかりである、昔の女に会いに行くだろう、という予測を立てて、長旅をする。女の家のまえのアパートで張り込んで、生活を観察し、犯人を逮捕する、というそれだけのストーリーなのだが読ませる。
ほかの短編については、収載された「鬼畜」「一年半待て」の2篇が面白かった。
いずれも、女性の犯罪について書かれている。
「鬼畜」では、愛人とその子どもへの憎悪をかきたてる女が、夫に、子どもを殺せとけしかける。手を汚すのは、夫であり、女は手を汚さない(証拠を残さない)。女性は筋肉を使わない暴力で、犯罪を実行する、と私は考えている。同じ考えで書かれた小説だ、と思った。
「一年半待て」では、フェミニズム(婦人運動家)への皮肉が描かれていて最高だった。夫を殺して、そのあとに、執行猶予つき判決を得るために、犯人の女は、婦人運動家を利用するのである。同情すべき女が、実は、計画的な殺人を実行していた、という視点が良かった。
松本清張が大人気作家になったことに納得である。


